第6話
妖精から加護なるものをもらい、朝凪さんの下着姿を見た俺。無事炎上する。
:テメェ見やがったなァ!!
:犯罪者さんの配信はここですか?
:見ろ、邪悪な性の獣が本性を表したぞ!!
:奏多を許すな〜w
:薪を焚べ焚べ
:妥当な罵詈雑言なのでモデレーターは動いていない模様ww
:現行犯処刑してやるから待ってろ
リスナーたちからは批判の嵐だが、これも仕方ないことだと享受する。
加護の力はすごいが、乱用はしすぎないほうがよさそうだ。
その後、一時間目の授業も終わって教室に帰り、何があったのかを質問攻めにされてすっかり生気が失われた。
そして二時間目が始まり、授業を聞きつつ妖精たちに小さな声で質問してみる。
「なぁ、加護ってこんな簡単にもらえるもんなのか?」
:まぁ案外すんなりあげてるかもな
:あげても使えないだけだね
:特にぽまえはワイらを知覚して反応してくれるから、あげたらどうなるか見たいんやろ
:ぶっちゃけ言えば貴様はいいおもちゃw
:せいぜい俺らを楽しませろ
:興が冷めたらどっか行くのが妖精よ
「ふーん。飽きたら去る、ね。本当に配信者とリスナーみたいな関係だな」
面白くなくなったら、裏切られたと感じたら、別の面白いものを見つけたら……。そういう気まぐれでどこかへ行くのは配信をみるリスナーらしいと感じた。
まぁ俺的にはどっか行ってくれても全然構わないんだがな。……一人でアレをする時とか見られてんのすごい恥ずかしかったし……。
(ま、特に面白みのない人生だし大丈夫だろうな。変なことに巻き込まれなきゃ妖精どもも離れてくだろ)
# # #
「おい冴島ァ、テメェ一時間目に萌羽と何話してたか聞かせろやゴラァ」
「え、えぇ〜っと……」
はい、早速変なことに巻き込まれてしまいました。
四時間目まで授業も終わって昼休憩の時間へと入ったのだが、クラスメイトの男子に
クラスメイトの名前は
他にも二人舎弟らしき生徒が二人いるが、どちらも柄の悪い人である。
:お決まり展開きちゃ〜〜
:ドンマイww
:同接数増えたから巻き込まれ体質になってきたね
:飽きさせてくれないねぇ……!
:退屈させてくれるなよ?
:さぁ、どう切り抜ける
:がんばえ〜
「別に、ただ案内してもらっただけですけど」
「本当かァ? 嘘ついてたらどうなるかわかってんだろうな……アァ!?」
「そうだぜそうだぜ!」
「吐くなら今のうちにしろよ〜?」
すこぶる人気がない場所で助けも呼べない。スマホも使えない。逃げようにも舎弟二人に邪魔されるのがオチだろう。
俺がなんとかするしかないが……そうだな。「乱用しない」と言ったが、とりあえず使えるものは使ってみよう。
(【透過診断】)
人体模型の妖精からもらったものを使用し、何か使える情報はないかと探ってみる。
すると轟のズボンの下が透けて見えたのだが、そこには――クマさん柄のパンツがあった。
「ぶッ!!?」
「あ゛ぁ!? 何笑ってんだゴラァ!!」
「いや違う! なんでもな……あー、いや。そうだなぁ……」
俺はニヤリと口角を上げ、轟くんの瞳をジッと見つめて話し始める。
「轟くん、俺に恐ろしく恫喝していてカッコいい君だが、そのズボンの下が可愛らしいくまさんパンツだと皆が知ったらどう感じると思う?」
「は――なッ!!? て、テメェ何言ってやがる!!」
わかりやすく後ずさって焦りの表情を浮かべる轟くん。
このまま押していけるだろうか。
「いやぁ〜……ついさっきお腹が痛くてトイレに入ってたんだよ。外に出ようとした時に君がいてね、見てしまったんだよ」
「な、なっ……」
「実に可愛らしくて良いじゃあないか。うんうん、俺もこの噂を流そうかねぇ? 君が俺と朝凪さんが何もしていないということを信じないように、その噂も信じられないかもしれないぜ?」
きっと今の俺はとんでもないほどゲス顔をしているだろう。どちらが悪役かわからなくなるほどにな。
だが突っかかってきたのは相手だし、俺は悪くないだろう。
「ッ!! テメェ、誰にも言うんじゃねぇぞ! お前ら行くぞ!!!」
「え、ま、待ってください轟さん!」
「どうしたんすか轟さん!!」
舎弟二人を連れてその場を立ち去る轟くん。轟くんがクマさん柄のパンツを履いていたお陰でなんとかなった。
まぁ、洗濯して変えのパンツがないからこれ履いていけとか言われて仕方なくなんだろうなとは予想がつく。
「ふぅ。危なかったな」
:GG!!
:お前悪っww
:ヤンキーがクマさんパンツ履いてんの草
:お前……闇落ちはするなよ?
:途中で人格変わってた?w
:ちょっと怖かったゾ
:よく口が回るな、お前
:ヤンキークマくん傷ついちゃったかな
:クリティカルヒットしてたっぽいしな
:不登校になるかもしんねーぞ
「ちょっとは恫喝されてた俺の心配しろよお前ら……」
俺の心配を全くしていないリスナーどもだが、とにかく大きな事態にならなくてよかった。
朝凪さんの変な噂が広まったら迷惑をかけちゃうしな。
俺は一安心して息を吐いた後、教室に戻った。
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