第177話

授業が終わり、3人で講義室を出て行く途中、朱朗が友達何人かに呼ばれた。



「お、朱朗!おひさ!」


「おうお久ー。」


「一緒に飯いくべ。」



当たり前のように誘われる朱朗。芸能人でも一般人との壁を作らない朱朗は、男友達もセフレと同じくらいいた。



授業数も少ない4年生とあってか、仲良しグループが久々にそろったらしい。



朱朗が星來の方をちらりと見て。星來は首をかしげた。



「風音さんと響木くんも来る?」



グループの一人が快く二人を誘うが、朱朗が「あーアイツら忙しいから。」と手を振り断った。



朱朗が一弥を見て彼に近付くと、そっと耳元でささやく。



「ねえ、星來を抱いたって話。あれ嘘だったのね。」


「……だったらなに?」



一弥が「寄るな。」と、朱朗の顔を手で払う。



「悪い。番犬頼むわ。」


「……は?」


「俺、今謹慎中でさ。星來にあんま近づけないから。」 



朱朗が一弥の肩を軽くたたいて。


 

一弥が一瞬、嫌そうな顔をするも。その言葉にすぐに反応する。



「何、したの。」


「……今度、本気で殴ってくれていいから。」



朱朗が、名残惜しそうに星來を見つめる。


 

星來はそんな朱朗を見て、今日初めての笑顔をみせた。



「ほら、友達行っちゃうよ?」


「……うん。」 



その笑顔に、思わず手を伸ばす朱朗。星來の透き通るような肌が自分を誘っているかのように引き寄せるのに。



駄目だと、なけなしの自制心が彼を思いとどまらせる。

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