第175話
「朱朗。机が狭くなるからペットボトルしまって。」
「じゃあ喉かわいたらいって」
「喉かわいた」
すると、0.1秒の速さで一弥が軟水のペットボトルを差し出す。星來はそれを受け取って、一口飲んでから一弥に返した。
「……ホストクラブで水を早く出す修行でもしたの?」
朱朗が冷めた目つきで一弥に投げかければ。一弥が両腕を机につき、頭だけかがんで朱朗に返す。
「星來のために星來で修行したの。」
「じゃあ俺にも一弥くんの軟水ちょーだい。」
「ナンセンスすぎて言葉の端々が理解できない。」
そんな彼らのやり取りに必死に耳を傾ける周りの生徒たち。そもそもナンセンスな存在がナンセンスな話をしていると。
そして先生が講義室に現れ、壇上に立つ。200人収容の講義室でも先生の目は、“夏の横並び”をすぐに見つけた。
授業が進められていく中。朱朗は星來のノートの端に、あふれる想いを書き込んでいく。
『せーらが好き』
それを見た星來。とりあえず無視をする。
『せーらのかわいいとこも きついとこも わらいが拾えないとこも 料理がくそなとこも キスがへたなとこも』
褒められているのが1つしかない。
むかついた星來は、朱朗の書く手を払う。しかしポジティブ精神の朱朗はあきらめない。
『憎らしくて かわいくて ずっとオレのものでいてほしい。せーらがいないとオレしぬ。しぬときはいっしょだよ?(ほんとだよ?)それなのにオレバカなことした。たくさんせーらキズつけた。ごめんね大すき。いくらでもあやまるし告るし大好き。』
いかにも前科のあるクズがクズを再発しそうなクズの文章だった。
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