第174話

2限の世界文化資源学。



久々の大学だからだろうか。星來はまるで異空間にいるような気持ちになっていた。  


  

「………星來。君が僕を怖いのは分かってるけど、どうか番犬として側にいさせてほしい。」 


「一弥、あなたのことは怖くないわ。」


「ほんとう?でも星來。少し、顔色が悪いよ?」


「ええ、なんというか。右隣から霊気を感じるの。」



大講義室で、星來の左隣には一弥が座っており。そして右隣にはなぜか朱朗が座っていた。



夏の大三角形にもなれていない3つの横並び。こう3人も芸能人が並んでいれば、いやでも周りが大注目する。



「星來の右にいるそのクズ。僕が蹴散らそうか?」



一弥が星來を挟み、朱朗の方を強く睨む。



「その前に、事情聴取してみようかと思うの。」



星來がそっと隣に目を向ける。いや目を向けるもなにも。講義室の席なんて肩が触れてしまいそうな0.7ほどの距離だ。



「ねえ朱朗」            

 

「言わなくても星來の言いたいことは手に取るように分かる。」

   

「じゃあ言ってみて。」    

    

「『なぜあろくんはそこにいるの?』

なるべく側にいて、俺に慣れてもらおうと思って。」 

  

「つまり、ストックホルムシンドロームを狙いにきてるのね。」


「しっくりくるね。」



朱朗が聖來にルイボスティーのペットボトルを差し出す。



さっき朱朗がテラスで席を立ったのは、これを買いにいくためだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る