第170話

「それでRICOコレで。俺の勝手な嫉妬と八つ当たりで、星來を転ばせて……本当に、ごめん……。」    


「…………」


「すぐに謝らないといけなかったのに。あの時、きっとどこかで、星來とは一心同体みたいなもんだから何してもいいって決めつけてた。」



14歳。厨二病が蔓延する時期。



何をしてもいいわけではないが、闇より生まれし悪魔サタンと、天国から追放された堕天使ルシファーは表裏一体、もしくは一心同体だと思いたい年頃だったのかもしれない。



朱朗が胸にハットを寄せ、星來を真っ直ぐに見据える。



「“お前のもんは俺のもん。俺のもんは俺のもん。”」


「…………」


「覚えてる?『淡色と常套句』のセリフ。」



はっきり言って覚えていない。それよりも朱朗に無理やりキスされて胸を触られたことが衝撃的すぎて、セリフは撮影後すぐに飛んだ。



「多分あの時。星來は自分のもんだって勘違いして。響木とのエピソードに嫉妬して、叶恵リカとデートした。わざと写真まで撮って、後から星來の嫉妬を煽ってやろうって。」



塩バニラアイスとフランクフルトを食べるリカちゃんの画像。あれははっきり覚えている。



その時に「星來も今度やって!俺の彼女なんだし!」と言っていたが、まさか朱朗は、あの時本当に星來が負けじとやってくれるとでも思っていたのだろうか。



「…………」


 

言葉は紡がないが、肩であからさまにため息をつく星來。

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