第168話

こういう時に登場するのは、決まって王子なのに。



残念ながら満を持して登場したのは、クズだった。



「その画像を拡散させたのは、『その弾丸はこんぺいとう』の関係者だろうねえ。話題作りじゃない?」



朱朗が星來の後ろに現れて、彼ら3人を見下ろす。



「………あ、クズ、俳優、」


「どーもクズ俳優で売ってる朋政朱朗です!」



ハットを取った朱朗が、3人に俳優の笑顔を投げかける。 



そして星來の頬に顔を寄せるようにして、彼らにそっと囁いた。



「この子、俺の片想い中なの。」


「……え、でも。あんた。他の女抱きまくってんじゃん。」


「身体はクズでも心は一途なの。お宅らも同じ男ならわかるっしょ?」



「…………まあ?そうかな。。」

「すごい潔いいな、あんた。」



朱朗の頬と星來の頬は間近に迫ってはいるものの、触れてはいない。牽制のために星來を守りたいが、怖がらせたくもない。朱朗の精一杯の配慮であった。



「で、今から俺が彼女をくどく番。悪いね。選手交代ってことで。」



朱朗がひらひらとハットを扇ぐ。


   

3人が渋々と席を立ち、頭を掻きながら立ち去っていく。



クズがクズに絆された瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る