第166話

星來が久々に大学に顔を出したのは初夏。6月のことだった。



現在放送中のドラマの主役が登校したとあって、周りは星來に興味津々だ。



4月から星來たちは、4年生になっていた。



少し大人の雰囲気が備わってきたと、男女ともにその視線は釘付けだ。新1年生は芸能人である星來に惚れ惚れと、遠目に見ている。



今日は2限から授業だ。時間まで、パラソルの並ぶ屋外のカフェテリアで座っていることにした星來。



「おはよ星來ちゃん!」 

「星來ちゃん!今日はアイドル君とは一緒じゃないの?」



知らない男子3人組が、許しを得ず星來の向かいに腰を下ろす。 


    

まだ男性への恐怖がぬけず、どうしても身構えてしまう星來。どう言葉を発せばいいのか、とりあえずかしこまって「こんにちは。」と挨拶を返す。



「ねえ、国際コミュの4年生だよね?俺らと一緒!」

「何限から?2限?」



「う、うん……2限。」



視線を上手く合わせられず、愛想笑いさえできない。そんな星來に、一人の男がスマホの画面を見せてきた。



「ねえ、星來ちゃんて響木一弥と付き合ってるの?」


「え?」


「これ、『HANZO』の観覧席で仲良さげに座ってるの。星來ちゃんと響木じゃんね?」


       

見せられた画面には、『HANZO』の観覧席で話している、自分と一弥の画像。それはSNSで出回っているものだった。

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