第165話

一弥とはあれ以来会っておらず。彼から電話も何度かあったが出なかった。



唯一返したメッセージは、端的なもので。



《ごめん星來。正式に謝らせてほしい。》


〈謝らなくても大丈夫〉


《じゃあ、会いに行ってもいい?》

 

〈今はしばらく一人になりたい〉    


 

星來は本当に一弥に対しては怒っていなかった。



一弥のしたことは間違ってはいない。あれだけ一途に自分を想ってくれていたのだから。キス一つで自分が咎める資格はない。



ただ彼のキスよりも、朱朗に襲われたことばかりに囚われていた。そのせいで、一弥をないがしろにしている自分が嫌で嫌で。会えばまた、一弥を傷つける。


 


朱朗からは、あれ以来着信もメッセージもなく。きっとすこぶる反省をしているのと、怖がらせたくないという思いもあるのだろう。 



朱朗のしたことはどう考えても間違っている。誰がどうみたって間違っているのに。



それでも私は、朱朗のことでずっと頭を抱えている。もしあれを許したとして、私は間違っていないといえるのだろうか。



星來は、朱朗をどこかで許したい自分がいた。でもそれを許したとして、この先クズはまた、他の女を抱くという負のスパイラルに陥るだけ。



世間一般の男が信じられないわけじゃない。



朋政朱朗を信じたいのに、信じられないのだ。

 

  

よりにもよって、なぜ大事な幼なじみと友達が異性なのか。



相談できるような女友達もおらず、ましてや俳優とアイドルのことだ。スキャンダル案件を自ら他人に相談なんてしようがない。



ずっと星來の中では渦を巻いていた。

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