第163話

「大人になるにつれてね、人を好きになるのってどんどん難しくなるんだよ。」 



失恋したと言っていた青司だが。その言葉の真意は、単純に人を好きになりにくいとう意味なのか、それとも。なかなか未練を断つことができないということなのか。



「だから、星來ちゃんを好きな気持ちを大切にしなね。」



いつもなら何か一つは言い返してやるのに。



青司がオーストラリアに行くなんていうから、素直に聞くことしかできない朱朗。



自分が星來を好きだと意識したのは14歳だったが、本当はずっと前から好きだったに決まっている。



俺のかわいいかわいい星來。



もう俺たちの関係は、幼なじみ以下になってしまうのかもしれない。会ってももらえない可能性もある。



それでもやっぱり星來が好きな事実は、きっとこの先一生否定できないだろう。今までどれだけ他の女を抱いても満たされることはなかったのだから。



朱朗はスマホを取り出すと、ある決意をする。



そして蛸せんべいを食べる青司に向かって、一言つぶやいた。



「青兄……さんきゅ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る