第157話

そして処女だとわかった瞬間に襲うことをやめた朱朗に対し、星來はぐちゃぐちゃな顔と感情でわめき散らす。

 


「どうせこの女馬鹿だとかさげすんで見てるんでしょ?!」


「み、見てません。好きです。」


「敬語やめてッ!!しねっ!!」



重いビーズクッションを投げようとして、腕が空回りし、見事頭に撃沈する星來。


 

「ねえ、星來。ちょっと、おちつこ」


「どの口が言うんだ出てけッ!!」



星來の言うことが最もすぎて。何も返す言葉のない朱朗。



しかしこんな風に取り乱した星來を前に、すぐに帰れるはずもなく。朱朗は突拍子もなくキッチンにいき、星來好みのハーブティーを勝手にブレンドしようとする。



「(俺ってば小粋なカフェ男子になれるかもしんない!)」



こんな時に何を小粋に思っているのか。朱朗は、そう思わずにはこの状況を乗り切れない気がした。 


  

ベルガモットにカモミール、紅茶のアールグレイで整えて。ミルクを浮かべれば星來の好みのハーブティーになるはず。



ハーブどころか紅茶の種類さえ調べたことがないのに、星來のお陰で自然と身についてしまった。好きな女にしかこんなことはしないし、好きな女でしか身につかない。



本命は星來だけで。星來が他の男に抱かれたという嘘が、ずっと自分を蝕んできた。他の男がいいのかもしれないと、どこか自信のない自分がいたのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る