第148話
「せいらちゃん?!」
聖來が思わず立ち上がり、観覧席を駆け下りていく。当然観覧者は星來を不思議そうに目で追う。
しかしそんな星來の不安をよそに、朱朗はゆっくりとクリアしていく。
何台ものカメラの存在に足を止め、観戦席の袖で立ったまま朱朗を見守る星來。側までいけば逆に朱朗の邪魔になるかも知れない。
そこから第三難関のうんていもこなしていき、タイムリミットが迫る中、一弥と同じ最後の難所までたどり着いた。
時間がないと、立ち止まる暇もなく、一つ目のポールへとジャンプした朱朗だが。
実は先程のタイヤのエリアで、ジャンプした時、左足を少し痛めていた。足場がほぼないタイヤの上では力の入れどころが分からず。左足を滑らせていたのだ。
カメラにばれないよう、右足ばかりに力を入れ踏み込んでいた。
当然片足だけの力ではジャンプ力が足りず。
そのまま朱朗は池へと落ちていった。
星來は、ジャンプした時のその違和感に気付いてしまい。慌てて朱朗のいるエリアまで駆けて行く。
「おっとぉ朋政朱朗が落ちたタイミングで風音星來が駆けていくーー?!」
司会者が実況をする中、皆が朱朗から、走る星來へと視線を移す。
「(あろう――――――)」
恐らく、捻挫したままの状態で池に落ちたのだろう。
水深2メートルはあるそこは、大人でも余裕で溺れることができる。
「おい!救護班!はやく!」
なかなか池の中から上がってこない朱朗に、スタッフが慌てだす。もちろん中継はCMへと切り替わった。
そして、朱朗が落ちたエリアまで来た星來は。
そのまま何も考えずに飛び込もうとした――――
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