第144話
「間近で見るとけっこう高いよなあ。」
星來がそう思ったタイミングで華井がつぶやく。
どう見たってあんなの、ただの筋トレでは役に立たないだろう。同じアスレチックを家に用意して、練習でもしなければ意味がないと感じた星來。
星來の感じることは最もで。
何人かの芸能人が挑んでいく中、なかなか最後の第四エリアまでたどり着けるものはおらず、次々と池に落ちていく。落ちる瞬間はやはり結構な迫力だった。
とどこおりなく進んでいく中、ついに彼の名前が呼ばれる。
「響木さん、スタンバイおねがしまーす!」
一弥が呼ばれ、他の観覧者から拍手が送られる。立ち上がった一弥を星來が見上げれば、一弥が星來だけに笑顔を落とす。
「がんばってね、一弥。」
「うん。」
「無理、しないでね。」
「無理しないと、星來とは付き合えないから。」
一弥がさりげなく星來の髪を撫でて、スタンバイ位置へと歩いていった。
基本的に無表情な一弥は、リアクションが取れないため、あまりバラエティに参加することはない。
前回の『君の識るマインド』は心理戦のためポーカーフェイスを有効活用できたものの、今回は無表情で落ちるのか。
他の共演者たちは興味津々だった。
司会者がスタジオの不二海や、現場にいる華井に応援メッセージを求め、一弥がスタートの合図を待つ。
サイレンの音と共にスタートダッシュを切る一弥。最初の坂を一気にかけ登る障害をクリアし、他の参加者が何人もクリア出来なかった難所もこなしていく。
ダンスも上手いと世間では言われてる一弥。元々器用な方なのかもしれない。
「やばい響木一弥、顔ちっさ。くそかっこよ。」
地方アイドル出身のミレイちゃんが一弥に見惚れる。
あまり緊張することのない朱朗。目の前でまざまざと一弥の軽々とした身のこなしを見せつけられ、緊張感を覚えていく。なにせ次は朱朗の番だ。
「あ、あれいけるんじゃない?!」
華井が興奮気味に、釘付けになっている。
第三難関の腕力が試される“うんてい”も卒なくこなしていき、ずっとハラハラしていた星來も、本当に100万円獲得するのではないかと興奮に変わってきていた。
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