第143話

「星來。」


「一弥!」


「あっち座ろう。」


「ちょっと!」



星来が一弥に手を引かれる。


  

アイドルのルールは厳しく、基本的に仕事で関係のない異性との関わりは各事務所が禁じている。特にこんなにカメラが何台もある中では。



中継中でなくとも、これだけ多くの共演者がいるのだ。どこから噂が広まるかは分からない。



「クズだって地方アイドルと仲良くしてるんだから。」


「……そうだけど。私の席、ここじゃないし」



一弥が隣の席に星來を座らせれば、一弥の隣には華井が座っていた。



「せせせーら、ちゃん!」


「お久しぶりです、華井くん。」


「おはおおお久しゅうございます!」


       

二人が一弥を真ん中に久々の挨拶を交わす中、朱朗は遠目でそれを確認していた。華井とはRICOコレ以来会っていないはずなのに。なぜか普通に話している。



朱朗も今回ばかりは、直接一弥に宣戦布告され、筋トレに真面目に取り組んできた。いや、俳優であるのにお前は何をしているのか。



「(星來は、……隣に来てくれないのか。)」



ミレイちゃんに笑顔を向けつつも、向こうの席にいる星來が気になってしょうがなかった。


   



それからスタジオの出演者たちが疲れを見せはじめた終盤戦。スポーツアスレチック『HANZO』の開幕である。



高さはざっと5メートルのものから10メートルはあるだろうか。プールにあるジャンプ台の高さくらいの巨大アスレチックが並べられている。



その下には水深2メートルほどの池があり、そばでは救護班が待機している。



アスレチックの柔らかい素材で安全面に配慮はされているが、落ち方が悪ければただの池ポチャでは済まされない。

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