第140話

「一弥がいてくれたら、盗撮もされないんじゃない?」

「……えっ」

「だって一弥、男の子だし。近くにいてくれたらいいのかも。」

「…………」 



それをどう受け取ったのかは分からないが、次の日、教室で一弥が星來にある決意表明をすることとなった。



「あの。風音さん。」


「星來だってば。」


「僕、風音さんの番犬になるから。」


「…え?人間じゃだめなの?」


「番犬になるから。だから、僕以外の男子の前で、昨日みたいなことはやめて……」



星來が席に座り、台本を開く中、一弥は緊張した面持ちでそう宣言したのだ。



「僕以外に、ああやって肌見せるのは…やめて……ほしい」


「番犬にはいいんだ?」 

       

「…………」 




星來は、初めから今まで一弥のことを友だちとして見てきたが、一弥は最初から自分を女子として扱っていた。



もし一弥が初めから自分に恋心を抱いていたのであれば、8年もの間片想いをしていることになる。自分が朱朗に恋心を抱いているよりも長いのだ。



一途な彼の想いを、いつまでも利用しているのも疲れてきた星來。罪悪感もそろそろ悲鳴の上げ時だ。 



「(もう、いいか。…一弥のものになれば。)」



揺れるタクシーの中で、そんなことを思うのであった。

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