第135話

「せーら、今度のスプフェスでるよね?」


「うん。」


「俺、『HANZO』に出ることにしたから。」


「え。うそ。」


「せーら、俺が100万獲ったら俺とえっちして。」


「……去年オファー断ってなかった?」


「うん、俺スポ根要員じゃないもん。」


「お喋り要員だもんね。」



去年だけじゃない。確か一昨年も、その前もオファーが来て断っていたはずなのに。突然今年オファーを受ける心境の変化が理解できず。



星來は、あのスポ根アスレチックに朱朗が出演するのは反対だった。昔現役サッカー選手が足の腱を切り、しばらく試合に出場出来なかったという裏話があったからだ。



もちろん表立った報道はなかったが、業界関係者の間では有名な話だ。それでもあの企画がなくならないのは、それだけ視聴率がいいということ。


    

「……心配。朱朗みたいなスポーツやってきてない子があれに出るなんて。」


「お母さんか。」


「ねえ、朱朗。」


「ん?」


「わたしのこと、好き?」 

 


星來がウォーキングをしながら、自然とそんなことを聞いた。



星來はずっと不二海の言っていたことが気になっていた。昔はクズでも、好きな人ができてクズは辞めたと。彼のようなタイプが、本来のクズのあり方であるとすれば朱朗は一体何なのだと。



「え?めっちゃ好きだよ。」


「……なんで、好きなのに他の女を抱くの?」


「星來だって。俺のこと好きなんじゃないの?」


「………うん、好き。」


「ならなんで他の男に抱かれたの。」


「………ばか。」



クズはどう転んでもクズらしい。



彼女が抱かれたから自分も他の女を抱くみたいな。そんな負の相互作用は、恋愛の駆け引きなんかではなく、単なる自己不満を満たすためだけにあるというのに。



星來はランニングマシーンから降りると、首にかけていたタオルを朱朗のお腹に置いた。

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