第131話

タリーランプが灯りっぱなしのカメラ。結局尺を取りすぎだとスタッフから『決着』のカンペが出され、二人はそれぞれ同じオクラのパネルを出した。



するとなんと、二人ともに正解。



断面が星型のオクラ。絶対に互いが互いに選ばないと思っていた嫌いな食べ物。裏をかいた作戦だった。



ドローとなったゲームだが、二人の心はドローでは済まされず。



4時間に及ぶ撮影が終わり、それぞれ楽屋で私服に着替えた二人。たまたまテレビ局のロビーにて鉢合わせることとなった。




「……彼女とおうちデートなう。って、あれ写真集のオフショ?」

 


ハットを被り、色付きサングラスをする朱朗が、キャップを被る一弥に問う。



大学でも互いに何度か見かけることはあっても、こうしてプライベートで話すのは今日が初めてかも知れない。



「だったら、なに?」 



警備員が局の入口からこちらを見ている。しかし一弥は、射殺すような視線を絶やさなかった。


 

「……星來を、抱いたの?」



クズの思考は下世話でしかないのか。局で何聞いてるんだと思いつつも、一弥は朱朗にあきれ顔で応える。



「だったら何?」


「……それって、バージン?」


「…………バージン、だったかもね。」


「かもって何。好きな女なんだから覚えてるだろ。」


「まあ、かなり狭かったよね。」


「…………」



まさかRainLADYの無表情が下ネタを言うとは思わず、朱朗が顔をしかめる。いや下ネタをふったのは他でもない朱朗なのだが。



「僕が、むかつく?」


「むかつくね。」


「腸煮え返りそうなくらい?」


「そらあね。」


「でも平気で他の女を抱くクズは自己中すぎない?」

  

「クズで自己中で、何が悪いの?」



この男……駄目だ。



自分の性格を全てを理解した上で星來を傷つけている、開き直ったクズだ。純で一途な亜泉とは違う生き物。同じ兄弟なのが信じられない。



珍しくも一弥が舌打ちをし、再び朱朗を睨む。

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