第132話

「今度のスプリングフェスタで、スポーツコーナーに出ないかって話がきてるんだ。」


「……ああ、あのアスリートとか出る『HANZO』?」


「うん。スプフェスのメインイベント。」


 

いくつもの番組が集結する『スプリングフェスタ』。一年の中でも一番多く芸能人が出演する春の番組である。春からの新番組の番宣を目的としたもので、生放送で開催される。



そのの中で取り上げられるスポーツエンターテイメント『HANZO』。いくつもの険しいアスレチックをクリアしていき、最終的にジャンプして、天井からぶら下がる100万円を獲得するゲーム。



元オリンピック選手や、筋肉自慢の芸能人が出演するというものだが、今回RainLADYの新曲とドラマの番宣として、メンバーの中から1人だけ出演してほしいと事務所から言われていた。


  

一弥はエンタメ要員でもスポ根要員でもないため、華井が出演する予定だったのだが、今ここで出演を決めたのである。



「君にもオファーいってるよね。あれに出たがる芸能人は少ないからさ。」


「俺が二軍要員みたいに言うなよ。」


「三軍要員じゃなかった?」


「そうかもね。その三軍にもオファーきてたよ。」


  

『HANZO』は国民にとっては大人気番組ではあるが、出演する側の芸能人にとっては、あまりいい番組ではなかった。



これまで報道は一度もされていないが、過去に怪我をした芸能人は数しれず。



アスレチックの下は深い池になっており、落ちても怪我はしないはずなのだが。実際はアスレチックから足を滑らせ、捻挫や骨折なんてのはよくある話だった。



筋トレは自主的には行ってはいたが、やはり身体を張ることは嫌いだった朱朗。当然断ろうと思っていた。



「……スプフェスって。4月からの番宣目的の番組だよね?」


「うん。」


「なら星來も出演するってわけね。」


「そうだね。」 



『その弾丸はこんぺいとう』の番宣で、『スプリングフェスタ』に出演することになっていた星來。



そのメインイベントともいえる『HANZO』で、朱朗と一弥は身体を張った対決に臨むことになるのであった。  



「もし僕が100万獲ったら、星來と付き合うから。」


「………目がまじだね。」

  


そして、朱朗の転機ともいえることの発端。彼のクズ精神を変えることとなる波乱の幕開けである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る