第129話

今回はカード6枚に描かれた食べ物の中から、お互いに嫌いな食べ物を当てるという単純なもの。



対面に置かれた仕切りのある机。その机の前は、ラーメン屋のカウンターのように少し高くなっている。それぞれ食べ物が描かれた6枚のパネルが並べられていた。



パセリ、ピーマン、らっきょう、春菊、パクチー、オクラ



最終的にその中の1枚のパネルを取り、相手の嫌いなものを当てる。

 



「朱朗君はクズだクズだと言われてるけど、それを改善しようとは思ってないの?」


「クズで売ってるだけで実際私生活がクズだとは限らないのが芸能人じゃん?」


「どの口が言ってるの朱朗君。今ここでこれまでの所業を並べてもいいんだよ?」


「ははは俺の何を知っているというのかい笑えない王子くん。」 

 

「例えば、心音に始まり、リカに京香に冴子にレオナに――――」


「響木くんは俺のストーカーなのかな?」



嫌いな食べ物とはまるで関係ない話で尺を伸ばす二人。そこからどうやって答えに導くのかは分からない。


 

「どれもクセは強いと思うんだけど、朱朗君は高飛車な女の子よりも軽い女の子が好きそうだよね。」


「いんや。高飛車一択。」


「この中で一番クセが強いのは、パクチーのレオナかと思うんだけど、」


「そりゃ外国産だからね!俺はパセリの心音ちゃんかなーって。」


「あいにく僕はパセリちゃんを知らないんだ。」


「え?食べたことないの?」 


「誰すぎ。」

 

「そらそうか。俺の高校の同級生だし。」



そらそうだ。



朱朗が頬杖をついて悩むポーズを取り、一弥は腕を組んで朱朗を睨む。なぜこの男は星來に気のある素振りを見せておきながら、こんなに他の女と関係を持っているのか。



星來の気を惹くためだとしても、あまりにもやりすぎだ。あんな深夜に芸能人が一般人の女と抱き合っているなんて、いつ芸能界からほされてもおかしくないのに。



なんにせよ一弥は、星來を傷つけている事実に怒りを感じていた。

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