第123話
見慣れた星來の顔。やはりすっぴんの彼女は透明度が増す。そう見つめ、大きくため息をつく朱朗。頭を搔いてから、廊下の方へと歩き出す。
「ころっと第三項侵しそうだから帰るわ。」
「そうね。けろっと犯されたくないからそうして。」
「やっぱふらっと泊まってこっかなー。」
「ちゃっちゃか出てってくれない?」
朱朗も星來も、泊まりたいのか泊まってほしくないのか、気持ちがころころと変わっていく。
しかし朱朗がクズ発言により、最終的に自分を煽ることが分かっていた星來。
食い気味に言葉をかぶせるのであった。
「さやちゃんちに泊まりにいこっかな」
「さやちゃんによろしくー」
「そう言えば俺、今度番組で笑えない王子とカードゲーム対決するんだあ。」
「うそ、絶対録画する!」
「じゃあさやちゃんち行ってくる〜」
「ばいばーい。」
朱朗を追い出し、玄関のドアを閉めようとしたところで朱朗が言った。
「明日朝6時に迎えにくる。」
「5時半にして。」
「6時なら迎えに行くのに。」
「ならいらない。」
付き合っているのかいないのか。幼なじみの延長線上に芽生えたはずの恋はとっくに通過してしまった二人。
そして、これでもかと極めつけのメッセージが朱朗から入ってくるのだ。
《俺たち勝ち組と君の瞳に乾杯。》
〈かんぱい〉
漢字に変換するのも面倒な星來。このくだらない呪文を律儀に続けている朱朗は、やはり恋人ごっこでしか終わりたくないのだろう。スマホを手にする星來の暗い顔が画面に映る。
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