第121話

食器を洗い終えた星來が、朱朗の正面に向いて、彼の胸元に手を置く。



少なからず嫉妬をしてくれているのだと感じてしまう星來。ダメな女を演じるのが得意になりつつあった。



「青兄は私に『星來ちゃんの処女奪ったことなんてすぐ忘れる』って言いながら、めちゃめちゃ優しくしてくれたし。」


「……へえ」


「一弥は甘い言葉しかささやかない癖に、たまに意地悪で激しくもされたかな。」


「…あ…そうですか。俺は優しくも意地悪も激しくもできますけど?」


「あ、そうですか。」 



朱朗が星來の頬に大きな左手を添える。



その手のひらに頬を預け、擦るようにして彼の温もりを感じる星來。



一見何の変哲もないカップルの一コマにみえるだろうが、どこのカップルだって腹の底は分からないものである。



「で?どっちがバージン奪ったって?」


「え?嫉妬?ねえそれって嫉妬なの?」


「嫉妬にはほど遠いしっぽりとしたジェラシー。」

 

「つまりは嫉妬ってわけね。」


「男は自分の女が他の男と話してるだけでジェラっちゃうもんなの。」


「私ってクズの女だった?」


「朱朗の女です。」



朱朗がふっと息を吐いた瞬間。一気に星來の唇を食べて、その口内へと侵入する。



ここでキスをしてしまえば、深夜0時になりそうな今、星來を無理にでも襲ってしまう可能性がある。前回だってぎりぎりの状態だった。そう思ってキスを我慢していたが。



不二海とのキスシーンに、星來の体裁を奪った二人の男への嫉妬。たまらずキスで解消を図ることしか出来ない朱朗。

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