第120話

「ねえ、さっさと俺を帰らせてどうするつもり?不二海とのキスシーンを妄想でもして一人えっち?」


「そのクズな妄想も燃やせるゴミかしら?明日は可燃ゴミの日だわ。」



キッチンで食器を洗い始める星來。普段なら食洗機に入れて終わりなのだが、少しでも朱朗に構わないようにと自制心を高く保つための家事だった。


 

「星來、俺の知る星來をください。」


「な、にして…っ」



朱朗が、両手の塞がる星來の後ろから抱きつく。胸の下あたりに腕を回し、交差した手で腰あたりをさすりながら。



星來は泡がついた手で払うことも出来ず。むしろ泡で払ってやれば少しはクズも綺麗になるのかもしれない。 



「ぎりぎりの状態で生かされたいの?」


「ねえ、私明日朝早いんだってば」


「ぎりぎりの状態で寸止めされたいの?」


「なに?え?」


「いやなんでもないです。」


「……すんどめ?なにそれ。」



朱朗の下ネタが、大いにすべる。しかし朱朗はそれどころではなかった。すべるメンタルなんてものは、星來の身体を奪われたメンタルの比にはならないのだから。


 

「…ねえ、…青兄と。青兄が処女奪ったの?」


「……え、またその話?」


「それとも、笑えない王子なの?どっち?」


   

一弥だと言ったはずなのに。



不二海とのキスシーンよりも、本当に聞きたいのはこっちなのだろうか。バレンタインだと口実をつけて、わざわざ会いにきて?



もしかして。一弥よりはまだ青兄だと思いたいのだろうかこのクズは。同い年で同業の男よりも、年上のスパダリであればまだマシかと。

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