第119話

星來がバンッとテーブルに手をついて立ち上がり、カップとお皿を片付けようとする。



「ねえ、なに怒ってんのせーらちゃん。」


「怒りたくなるようなことしかしてない“彼氏”に怒ってなんてないし!」


「その“彼ピ”にバレンタインの愛の告白は?」


「世界中が朱朗を愛したとしても、私は常に敵に回る。」


「世界中を敵に回したとしても、俺は君を愛し続けたいのに、君は敵だからそういった敵同士の恋愛も悪くないよね。」


「ロミジュリ的な?」


「ロミジュリ敵な。」



聖來がそそくさとテーブルの上を片付け、キッチンに持っていく。シンクに響くように音を鳴らし、朱朗の方を強く睨んだ。



「用も済んだことだしお帰りくださいなロミオ。」


「まだ0時前だよジュリ。」


「シンデレラが0時10分前に帰ってたらガラスの靴は落とさなかったのよ?」


「うん、それじゃ王子と出会うツールがなくなるね」


「龍宮城で好きなだけ豪遊して二度と戻ってくるな」 

 

「浦島朱朗って?上手いなジュリ。」



明日も撮影で朝早いから早く帰って。と指だけで「行け」と伝える星來。今日はルームウェアではなく、しっかりパンツスタイルの服を着ていた。



帰らせたい星來とまだ帰りたくない朱朗。前回朱朗が家に来た時とは逆になっていた。

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