第118話
いつもの星來なら、嫉妬の一つでも煽ってやろうかと思うところだが、今日は単純にむかついていた。
あの時、知らないピンクの女とキスして抱き合っていた朱朗の方がよっぽど問い詰められるべきなのに。自分は不可侵条約第一項を守り、その件について問い詰めはしなかったというのに。
たかが演技のキスシーンで何を言っているのかこいつは。勝手なプードルは、やはりドブに落ちてドブネズミにしかなれないのか。
「そりゃ青春ラブストーリーだから、キスの一つや二つがなかったら、ただの調理学科のドキュメンタリー番組になりかねないでしょう。」
「てかいつの間にRainLADYとの共演OKになった?そんな簡単にNGの壁超えられるもんなの?」
「事務所同士がOKしたんだから超えられたんでしょ。」
「俺らも17歳ん時にラブストーリーやったじゃん。」
「やったわね。」
「あん時キスシーンなんてなかったことない?」
「未成年だからね。色々教育委員会との兼ね合いとか大変なのよ。」
朱朗が、納得できないというように眉間にシワを寄せる。不満をどう伝えればいいのか、何か言葉を紡ごうとするのだが。星來はすぐにそれを遮った。
「アイドルと本気でキスするわけじゃないんだから!フリよフリ!」
「でも華井は泣いてたよ?不二海が、『まあ触れるくらいはするし。でも勢いで舌入れたらごめーぬ』って言ってたって。」
「だったらなに?入れたとしたら何なの?」
「不二海の舌をぬいてとりあえず俺が星來とディープする。」
「演技でしかないキスなんてどーせ記憶にも残らないんでしょうね!」
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