第104話
ゾンビに食われた星來が熱くなり、頬がロゼ色に染まる。
ぱたぱたと手で汗をひかせるようにあおいで、カーディガンを滑らせるように脱げば。真横にいた華井が深い深呼吸をし、その扇情的な空気を吸い込む。
一弥が華井に向け、ダーツの矢で狙いを定めた。
しかしダーツが刺さる覚悟のある華井と、星來の目がふと合う。
「……アッ、うが、せ、せせせせッ」
「華井君、ですよね。」
「そ、そそーですぼくが野に咲く一輪の華井っす」
「ふふ。華井君、野に咲いているの?」
「はいッ、人を爽やかにするけん得意な25歳最年長リーダーっす!」
そんな風にぼくたちも生きてゆけたら素晴らしい。どこからかそんな歌が聞こえてきそうだ。
星來が握手の右手を差し出せば、華井が誰にも邪魔されまいとすかさずその手を両手で握る。
「あの、今度の写真集『SELLY BEANS』!67冊はすでに予約済みなんで!特典のサイン入りポストカードは全種コンプしにいくと待っとって下さい!!」
「え?…67冊も?言ってくれればサンプルを渡せたのに」
「サンプルじゃなく製品でなくては風音星來ファンとしてん名がすたります!」
さすがに握手が長すぎると、一弥が華井の手を星來からもぎとる。
「お客さん、タッチ禁止です。つまみ出しますよ。」
「つまみ出すんなら星來様につまみ出されたい!!」
最年少は5人への牽制も難なくこなす有能な番犬。
そして番犬一弥は、さりげなく星來の肩を抱き、「あっちに星來の好きな“こびとづかん”のアオムジャキモンがいるよ。」とメンバーから距離を取らせる。
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