第101話

「でも仕舞には、変に公認されちゃって。」


「ね。公認カップルって言われて。いつSNSで拡散されるかって気が気じゃなかったよね。」


「私はちゃんと、“一弥とは友達です”っていう案内文用意してたわよ?」


「なにそれ。僕への嫌がらせ?」


「え?」



一弥が、星來の頬に触れる。指の甲を使い、撫でるようにして。触れてしまいそうな自制は、いとも容易く取り払われる。



触れられた頬が熱くなる星來。一弥は、普段は守るようにして自分の周りを囲うばかりで、あまり触れてはこない。



だからたまにこうして触れられると、驚きと緊張で鼓動が鼓膜に響いてしまうのだ。



「ねえ、ちょうだいよ」


「な、に?」


「嫌味なこの子。僕にくれない?」


「な、に言ってるの」



一弥が、透け感のある星來のカーディガンを、指でなぞる。



夏用の薄いカーディガンだから、素肌を直に触られている感覚におちいる星來。下には袖がフリルのノースリーブを着ている。



「ごめん。怖いことした。」


「ん、んーん……大丈夫。」


「ああごめん。違う感じ、だった?」


「な…にが、」


「違う感じ方、しちゃった?」



一弥が意地悪く、星來に横目で口角をふっと上げる。



「さ、さいてい……」


「最低なのは、星來の方。」 


「………そうね。」


「そうだよ。」



星來は一弥が視界に入らないようにと、窓の外に顔を向ける。

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