第99話
「高校生の時の話。まさかストーカーからの手紙が、手作りの飛び出すグリーティングカードだなんて。あれは酷かったよね。」
「手作りだから捨てられないとでも思ったのかしらね?」
「でも手紙の内容が『キミの内蔵脂肪を食べたい。』だもんね。」
「私はむしろ食べてほしいと思ったわ。」
高校入学したての頃から、しばらく立て続けに届いた手作りのグリーティングカードは、開けば飛び出すカードだった。北海道の五稜郭に始まり、沖縄の首里城までを紙だけで精巧に作リ上げられた渾身の作品。
その手紙の内容は『ボクの白血球を受け取ってほしい。』と、ぷちぷちで梱包された試験管が10本届いたこともあれば、『キミの腸内環境を整えたい。』とヤクルトが250箱、風音の実家に届いたこともあった。
日本各地の城と腸内環境に一体どんな繋がりがあるのかは知らないが、当時高校生だった星來にとっては充分な脅威だった。
「本当にあの時は、一弥に助けられた。一弥と友達になったせいで、周りの女子からはやっかみを買うことも多かったけれど。」
「僕も、星來には沢山助けてもらったよね。先輩には因縁つけられたけど。」
星來の顔がやわらいで、一弥にふわりと笑いかける。
普段はどこか寄せ付けないオーラで、少しきつい印象のある彼女の顔立ち。それが、自分にはこうして優しく笑いかけてくれると実感する度、堪らなく一弥の胸をしめつける。
僕だけが知る、星來の笑顔。
君の全てがほしい。
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