第98話

バンでの移動中。星來と一弥が隣同士で座る、上から身を乗り出す華井。



華井は星來と直接話したいのに、緊張のあまり話せずにいた。RICOコレでもせっかく控室で会えたというのに、チキって話せず仕舞い。だから今の二人にちょいちょい割り込んでいく。



そして一弥は、メンバーがいようともしれっと星來の隣をキープし、通路側の席から間接的な空気でメンバーを威嚇する。



しかし亜泉はその牽制を感じ取れず、星來にスルメジャーキーを前の席から渡して言った。



「星來ちゃんは顎の発達もいい感じに促されて大人っぽくなったよね。うん、色気も兼ね備えた美女!」


「亜泉君、私もう顎は鍛えてないから。でもありがとう!」



亜泉は星來が昔から顎の発達を促すためにスルメを食べていたのを知っていた。そして弟の朱朗はバナナ系の食べ物が昔から好きなため、亜泉の鞄には常にバナナガムが入っていた。




後ろからちょいちょい合いの手を入れられぬよう、一弥が二人にしか分からない会話をし始める。



「星來、あれからもうストーカーの手紙は届いてない?」


「もう、いつの話?」



一弥が、星來の透き通るような肌に魅入られる。



気を張っていないと、つい触れたくなってしまうその素肌に。大学でも隣をキープしているが、夜に見る星來は、亜泉のいう通り色気も兼ね備えていた。



吸い込まれそうな星來のまとう空気に、まばたきで遮断する一弥。パールグレーの長いまつげが揺れる。

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