第96話

しかし36コール✕3回通話ボタンをタップしても星來は出なかった。



ものの見事に朱朗をかき乱した青司。もしかしたら二人が拗ねに拗ねている元凶は、青司なのかもしれない。





一方その頃星來は。



都内でも有数の大型スタジオで、アニメーション映画のアフレコが終わり。たまたまレコーディングで訪れていたRainLADYのメンバーと鉢合わせしていた。



フロアの違うスタジオではあったが、RainLADYを乗せたエレベーターの箱に星來が乗り合わせて。久々に会う朱朗の兄、亜泉あずみが軽率に誘った。


 

「星來ちゃん!これから華井のお姉さんが経営してるアミューズメントバーに行くんだけど、一緒に行かない?」



朋政家の次男である亜泉。青司とも朱朗ともまた違った性格の持ち主で、天然系の彼。前髪重めなマッシュのコーヒーブラウン色。



すでに夜の10時を回っていても、平気で女優を誘う神経の持ち主であった。



「え?……私なんかが、一緒していいの?」



おそるおそる一弥の方へと目を向ければ。心底嫌そうに眉をひそめている。そしてその隣でキラキラと瞳を輝かせる華井。推しとのRICOコレ以来の対面であった。



「もちろん!人数は多い方が楽しいでしょ?行こうよ!」

 


23歳の亜泉が星來の肩に手を置こうとすれば、21歳の一弥がその手を遮る。



「あのね、こんな時間に女優と遊んでたらまずいでしょ?馬鹿なの?」


「え?だって専用のバンがあるし、バレなくない?アミューズメントバーだって貸し切りだよ?」


「いや…そうじゃなくてさ。マネージャーだって許可しないでしょ。そもそも共演NGだし。」


「共演NG関係なくない?この後はプライベートだよ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る