第95話

もちろん朱朗は今日もまた気が気じゃない。



先週、星來の二回は一弥が奪ったと聞いている。それがなんだ。なぜまた青兄にぶり返されているのか。



たった二回を奪った相手を把握しないと気が収まりそうもない朱朗。



自分がもし把握されるとしたら、恐らくパソコンでリストを作成されることだろう。それくらい膨大になるのであれば、もはや作成する必要もないのかもしれない。



しかし二回は違う。二回だけなら誰だってどの相手と寝たのかをはっきり覚えているはずだ。



もしかして、一回目と二回目は別の相手なのだろうか?



「(なんでっ、星來と寝た相手のことでこんなに頭抱えなきゃならんのか!)」



ソファに沈められた朱朗は、再びスマホをいじり出す。今すぐ星來に電話をして問い詰めてやろうか。



アドレス帳をスクロールしていけば、女の名前しか入っていない。あ行だけで56人。ほぼ名前だけで登録された端的なアドレス帳。



しかし聖來だけは、“風音星來”としっかり登録されていた。



今日のスケジュールはアニメーション映画の声優の仕事が入っていたはず。時計はもうすぐ0時になる。星來は疲れているだろうか?もし寝ていたら起こすのも可哀想だ。



とりあえず気を配るフリをしてから、通話ボタンを押す。こやつは精神論でもクズ認定をされるで朱朗あろう

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