第91話

「青兄が?振られた?そんなことあんの?」


「あるよあるに決まってんじゃん!いやないよ?普段はないよ?!」


「どっちだよ。」


「めっちゃ長い片思いだったからダメージ少ないと思ってたのにさあ〜。はっきり断られたら、やっぱり辛いのなんのって!」


「その割に元気だな。」


「いやだよ春風〜〜〜好き好きだようわあぁ」


 

身内の前で恥ずかしげもなく固有名詞を出すとか、さすが青兄。いや、青兄のように全てにおいてエリートな人間でも失恋なんてことがあるのか。



「(それならクズ俳優である俺はどうなるんだよ?)」



長く片思いしてるのは自分も一緒。自分もこうして本気の失恋をして、青司の前で泣き叫ぶ日がくるのだろうか?



いや、星來は幼なじみで同業の同僚だ。切っても切れないはず。なんせ“脈を切ってぎりぎりの状態で生かす”と脅しているくらいだ。



その脅しから切れる可能性は考えなかったのだろうか。朱朗は青司の頭を軽く叩いて汚い顔をあげさせた。



「おいスパダリ!お前はスパダリなんだろ?社内広報誌に会社の代表取締役よりも掲載されて、会社乗っ取る気か。って言われてるくらいのエリートなんだろ?」


「うん、そうなの。」


「それならそう簡単に諦めるなよ。ヤンデレでもメンヘラでも痴漢でもいいからその春風を奪いにいけ!」


「……会社というものにはね。コンプライアンス窓口ってもんがあるんだよクズ俳優。」


「芸能界にだってあるわ。クズを恐れてちゃ好きな女は手に入らないんだよ。」


「手に入ってないじゃん。」 

 

「うるへー。」

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