第89話
「でもそんな演技派俳優が、勿体ないよねぇ。」
「え?」
「こんな地方のラジオ番組でため録りさせられて。はっきりいって芸人並みじゃない。」
「芸人さんには頭が上がりませんよ。いつも俺を美味しくしてくれますし。」
「美味しくされるのも一つの道かもしれないけど、君なら俳優としての高みを目指せるだろうに。」
「……そう、ですかね。」
「いやまあ。そのクズのイメージを崩さないことにはどうにもならないんだけどね?」
「…………」
クズのイメージが悪いのも分かっているし、クズのイメージのせいで俳優としての仕事が少ないのも分かっている。
それならクズであることを辞めればいいのに。中毒者のように辞められないから、今更言われなくてもいいことをわざわざ言われるのだ。
自分をクズにさせたのは、幼なじみである星來であり、彼女との恋を拗ねにすねらせたのが一番の原因であることも。
ラジオ収録が終わり、新幹線で帰宅した朱朗は実家に帰ってきていた。
郊外寄りにある朋政の実家のソファで、大の字に寝転ぶ。
朱朗は一人暮らし用のメゾネットタイプのアパートも借りているが、その日の気分により両方を行き来していた。
「あー……喉つら。」
喋りが得意なクズ俳優は、この先どんな芸能の道を歩んでいくのだろうか。21歳の朱朗はそんな将来の自分よりも、今の自分が可愛いばかり。自分が出演した番組の動画配信を確認していた。
今は夜の11時を回ったところだ。両親はもう二階で寝ている。
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