第81話

「ちょッ、」



星來がカップから手を離したタイミングをみて、朱朗がビーズクッションの上に星來を押し倒す。



カサリとクッションが音を立てるも、思ったより星來の上半身は深くは沈まなかった。 



両腕を抑え、上から見下ろせば少し怯えた様子の彼女が見て取れた。



「二回だけは、青兄とじゃないの?」


「…え?なに?なんの話?」


「えっちしたの。もといバージン捧げたのは、」


「青兄って、言ったっけ?私。」 


「ゆったゆった」 


「間違いよ、それ。」


「は?どんな間違いだよ?」



いきなり余裕のない姿をさらす朱朗。つかんだ星來の腕は思った以上に細い。それでも上手く手加減することが出来ず、否応なく力をこめる。



先程までめんどくさいと思っていた星來は、そんな朱朗を見てクスリと笑いが漏れた。かわいいプードルが今にも第一項を侵そうとしているのだ。



そのしかめた顔で見おろされるのも悪くない。星來が腕の痛みをみせぬよう笑顔で取り繕う。強くつかまれた腕の脈が、星來の脳から指示を仰がれ小さく刻んでいく。



「一弥はアイドルよ?アイドルが私とセックスしたなんてバレたらまずいでしょ」


「…だから青兄って嘘ついたって?」


「青兄、勝手に私の処女を奪ったことにされて可哀想。」


「いやお前がそれいうか。」


「だって。青兄は私に甘いから。青兄なら嘘ついても許してくれると思って。」


「青兄、可哀想。」

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