第79話

「写真集って水着とかあんの?」


「あるわよ。2ページだけ。」


「はあ?女優だろ?グラビアじゃないんだから。」


「今やグラビア界もAIがはびこる時代なのよ?いつ女優のAIが出たっておかしくない。水着や彼シャツくらいしないと三次元女優の名がすたる」


「AIグラビアの魅力ってなんなんだろうね。えっちできんのに。」


「……」


「てか彼シャツ?彼シャツも撮ったの?」


「撮った」


「『彼氏』に事後報告やめて」


「AI彼女に事前連絡してもらいなさいよ」



朱朗は渋々スケジュール共有アプリの、星來の写真集予約日にこう記した。



『写真集1000部予約、カメラマンから個人売買にて全データ買い取り』



データの買い取りは叶いそうもないだろう。



星來がベルガモットティーにはちみつを注ぎ、香りを引き立てる。



自分は今後の女優業へと繋げていくため真摯に仕事に取り組んでいるだけなのに、なぜ朱朗に干渉されなければならないのか。



なるべく落ち着きを払い、朱朗に反抗心を向ける。



「女優が写真集出すってだけでなんでそこまで言われなきゃなんないの?」


「『自分の彼女が万人に見られるのは彼氏として嫌だから。』」


「『自分は好きなだけセックスしてるくせに。』」


「星來だってしてんじゃん」


「二回だけだもん。」

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