第77話

「深夜1時のキスは危険だってば」

 

「もう今は1時5分だけど?」


「ん、5分おきに危険度は増すの!」


「じゃあ2時になったら俺たちどうなっちゃうんだろうね」

 

「3時になる頃にはきっと朱朗は冷凍用宅配ボックスでカチンコチンに冷凍されてる!」 


「カチンコチン 笑」


「うるさいッ」



キスが離れた勢いで、星來が朱朗から距離を取る。そのまま後ずさりをすれば朱朗がついてくるものだから、仕方なく部屋に入れるしかなくなった。




北欧風を意識した小さめのソファと、その前にある木のテーブル。



ソファの後ろに飾られているアートパネルは、朱朗が昔出演した旅番組で訪れたフィンランドで購入してきたもの。バレリーナの女の子が一本筆で描かれた、和洋折衷アートだ。



テレビボード隣の本棚には、朱朗が出演した映画やドラマ、番組の他、RainLADYのライブ映像、一弥が出演したものまで並んでいる。そして青司が13歳の頃に黒歴史を残したファッションショーのブルーレイも。



「星來って自分が出演したのは残さないよね」


「残してどうすんの。」


「“わたしってこんなに可愛いのね”って感傷に浸る」 


「朱朗みたいな自分大好き人間じゃないもん」



その癖、朱朗の映像はちゃんと残してあるから、朱朗は満足気に星來が淹れてくれたベルガモットティーをすする。しかしながら響木一弥の映像まで並んでいるのは気に食わない贅沢な朱朗の思案。

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