第72話

「ちょ、華井、それってな…どういういみっ」



朱朗が華井に問いかけるも、スタッフの掛け声で周りが無理矢理伸びをし、再開の熱を上げ始める。マネージャーが呼びに来て、それ以上の話しが聞けなくなってしまった。



星來がセックスをしたのは二回だと聞いている。しかもその二回を奪ったのは、同じ朋政の名を語る長兄だと。



さすが自分と同じクズの血が流れている兄弟。子供の頃から知っている10歳も下の女優を、よくもまあ平然と抱けるものだと、憤りを感じながらも感心していた。





「手羽元は甘辛く煮るのがマストですよね朱朗くん!」


「まさに今の俺の気持ちを代弁するかのような甘辛さがベストですよね。」


「え?朱朗くん、今甘辛い気持ちなんですか?それはどういった心境なの?」


「ほら、あそこの牧場に馬や羊と一緒にひよこがいるでしょう?」


「ああ、ひよことの触れ合い広場がありましたね!お子さんなんかが好きそうなスポットですよね!」


「あの丸裸のひよこたちが将来こうして甘辛く煮られてしまうのかと思うと、俺の気持ちは美味しそうだなっていう甘さと、切ないなっていう辛さが調和するんですよ。」


「ひよこから一気に手羽元へいくって。飛躍しすぎですよ朱朗くん。」


「そんな俺は高校2年の春、跳躍飛びが飛躍的な記録を更新しましてね、」


「話が飛躍的にとびましたけどもね」



後半戦の朱朗の喋りは絶不調となった。



自分は散々いろんな女を抱いている癖に、星來を抱いた男のことが気になってしょうがない。



青司なら仕方が無いと、ようやく諦めの気持ちがつきかけていたというのに。

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