第71話
肌って。犬や猫が常にさらしてる、あの肌……?
いや犬や猫だって肌が毛に覆われているから素肌を直にさらしているわけではない。
つまり星來は一弥の前で何かしら素肌を見せた経験があるというわけで。それが例えば海やプールだとしたら?いや星來は美肌を保つために海やプールにはいかないはずだ。
それなら温泉?風呂?あの、笑えない王子と?
もしそうだとしたら、朱朗は絶対にそれだけでは済まされないことをよく理解していた。いくらアイドルでも同じ男。自分なら120%の確立で畳の上に浴衣姿の星來を組み敷くだろう。
「辛いわー。」と嘆きながらも、「まあ一弥ならまだ許せるか。」とファンとしての発言を隣でする華井。
その様子に、なぜこいつは許そうとしてるんだ?そこは問いただして激怒するとこじゃないのか?という疑問が頭に浮かぶ朱朗。
それよりも。と、朱朗は逃げるために違うことを考えようとした。
手羽元のおつまみに合うビールは絶対にドイツ産黒ビールだ。しかしこの『星宇宙居酒屋』のスポンサーである大手ビールメーカーの泡立つビールを、手羽元と共に美しく紹介しなければならない。
乾杯の後の一言では『丸くなるな、手羽になれ』と言おうと決めていた朱朗。それなのに今頭の中には、『肌を見せるな、淑女であれ』という新たなワードが出てきてしまった。
ああどうやら今の一弥の発言からは逃げられそうもない。
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