第70話

業界人として業界人に言うこともできなければ、実際曖昧な星來との関係性も不透明さを増すばかり。



いや自分は星來を彼女だと思ってますけどね?ただ思っているだけで公言できませんけど。



大好きなはずなのに、素直に好きと言って体裁を守ることができない自分。



なにがそんなに自分を不純色に染めていくのか、朱朗は自問自答の日を繰り返しながら不貞を犯してきた。


 

「僕の読みではな、一弥と星來ちゃんができてると思うとるけん。」


「……へえ?」


「星來ちゃんの話しすると一弥がすごか睨んでくるし。」


「へえ。」


「知っとる?今度星來ちゃん写真集出すって話」


「……は?…うそ」


「知らんと?ヤンマガに載ってたけど。あ、写真集いっても健全なやっちゃ」



まじ……。聞いてませんけど?



てかスケジュールに入ってた?…雑誌撮影は、ファッション系と声優系が何件か入ってた気もするけど。



スケジュールを共有しているはずなのに、写真集の撮影があったことを知らない朱朗。途端に、はあ。と息をつく暇ができ、ペットボトルの水を飲む暇がなくなってしまった。



「で、写真集出すらしいって一弥に言ったら、あいつ、すぐに星來ちゃんに電話しよってな。」


「はあ?」


「『肌は晒してないよね?水着姿とかないよね?』って確認しだして」


「……こわ」


「あの冷静そのものの一弥が、急に表情変えて慌て出して。びびるわほんと。」


「…………」



正直朱朗も、今は一弥と全く同じ気持ちである。ただ朱朗の場合、それをすぐ本人には言えないだけで。



「一弥がな、そん時凄い事言っててな、」


「……凄い事?」


「『僕にしか肌は見せない約束だよね?』ってな。なんか関節的に一寸の隙もない牽制をされたけん。ショックと同時に全内蔵殺されかけたわ。」


「…………は?」

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