第62話

「星來ちゃんは、その人を好きになって長いの?」


「…まあ。そうですね。7年近くにはなります。」


「え!それは長いね!星來ちゃんのそのひたむきさ、とんでもなく尊敬する!」


「……そう、ですかね。」


「うん!そりゃそうさ!」



実来が窓の外を見て、一瞬、思い詰めたような顔をする。しかしすぐにまた星來の方に顔を向けた。



「…片思いって、辛いけど。結局付き合えたとしても楽しいことばっかじゃなく、辛いことも多かったりするんだよね…。」



実来に尊敬すると言われ、実来の言葉に耳を傾け始めた星來。意味深な彼女の発言に、自然と、自分と朱朗を当てはめていく。



「多分好きになってその人と両思いになれたとしても、信頼関係が成り立たないと安心はできないものなんだろうね。」

 

「…………」


「恋って、安心できるまではずっと恋になるんだろうけど。いつか安心できる日がきたら、きっとそれが愛に変わるのかな。」


 

“信頼関係”という言葉を聞いて、気持ちが戸惑う星來。



自分は朱朗と幼なじみとしての信頼関係、仕事上での信頼関係は築けていると思っている。



でも“恋愛”に関しての信頼関係は、どう頑張っても築けそうにもない。不可侵条約がある限り、愛までの飛行距離が途方もなく遠くに感じる。



それでも自分は朱朗が好きだといえるのだから、確かに傍からみれば尊敬される対象なのかもしれない。



その途方のなさがいいか悪いかは分からないけれど。



それよりも自分が朱朗を好きだということにおいて、客観的に尊敬できる存在なのだと実感できたことが少しだけ嬉しかった。

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