第61話

「えっと、せいらちゃんは今、好きな人がいるの?」


「はい、この人です。」



星來が運転席にいる青司を指差した。



「え!そうなの?先輩はロリコンかどうかは知らないけど、せいらちゃんは大人っぽい魅力もあるから、先輩も年齢差は気にしないんじゃないかな。」



「おーい、嘘言わないよ星來〜」



青司は苦笑いをしながらも、実来の、星來に自分を勧めるような発言にちょっと泣きそうになっていた。なぜなら青司は、後輩である実来に想いを寄せていたからである。




「嘘じゃないもん。青兄にはいっぱい抱っこしてもらったもん。」


「先輩、それって合法的な抱っこで合ってます?」


 


「頼むよ星來〜、青兄、そんなこと言わせるために会わせたんじゃないんだけどなあ」


  

星來は青司に恋をしているわけではないが、昔から自分を妹のように可愛がってくれる青兄が知らない女と仲良さそうにしているのが気に食わなかった。



しかしこの実来という女、自分が抱っこ発言をしても楽しそうに笑っているばかりで、特に嫉妬している様子はなさそうだ。



それとも自分は敵にもならないほどお子ちゃまだと思われているのだろうか。



「いいなあ学生恋愛。私ももっと色んな人と恋愛しとくべきだったかな。コミュ力はあるのに、恋愛となるとどーもね。苦手というか。あんま恋愛経験ないんだよね私〜はははっ。先輩は5歳くらいから恋愛してそう。」


「当たり。」


「やっぱな〜。先輩恋愛経験100戦練磨って感じだし。」



勝手に喋り始める彼女。というかもしかして、青兄のことは眼中にないのだろうか?こんなにかっこいいのに?



星來は、こんな地味で図々しい女、自分が嫉妬するには値しないと、青司とのぎりぎりエピソードを一旦保留にする。

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