第59話

「せーらは昔から『かわいい』ね。」


「ねえ、『好き』って言葉はもらえないの?」


「当選しないともらえないの。」


「初めて会った時から応募してるんだけどなー。」


「抽選に外れたらかなしい?」


「うん。死にたいくらいに。」


「さすが女優さん。かなしい演技がお上手で。」


「もう。朱朗きらい。」


「『好きすぎてごめん。』」


「ふふ、この演技派AV男優」



もう一度軽いキスを重ねてから、二人はお互いに言った。



「俺たち勝ち組に、乾杯」

「私たち勝ち組に、乾杯」


 

そしてまた、絡め取るような深いキスをする。



あくまで二人は恋人役。それを忘れない呪文の言葉。そして恋人になれるその時間を惜しむように、キスはなかなか止まないのであった。





· ·· · • • • ❦ • • • · ·· ·





星來を見送りたい気持ちはあれど、青司には会いたくない朱朗。



そしてセックスをさせてくれない星來への当てつけのように、国際交流会館のレオナの部屋に行ってしまうクズっぷり。



当然星來は感情を押し殺し、「またね。」と笑顔で見送った。不可侵条約第一項は真っ当に適用されている。




そして今、星來は青司の車でテレビ局へと向かっている途中。途中なのだが……




「へえ〜。先輩にこんな可愛い親戚の子がいたなんて。」


「……こんにちは。」


「こんにちは!何学部なの?」


「国際コミュニケーションです。」


「あ、私コミュ力だけはよく褒められるんです!よろしくね、せいらちゃん!」


「…よろしく、お願いします、実来さん……。」

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