第52話
あくまで清純派女優を貫いていた星來。曽祖父のためにも風音の名を汚すことはできない彼女であったが、彼女の周りにはちょっとした逆ハーレムが出来上がっていた。
彼氏役の朱朗、番犬役の一弥、そしてパパ役の青司。
朱朗に対する対抗策が、こうも上手く成り立つのかと星來は腹の中で高笑いをする日々だった。
当然朱朗は今日もいい気はしていない。
電話の向こうから聞こえた一弥の声。無理矢理切られた通話。そして血の繋がった兄である青司という存在。
「あー萎えた萎えたやめやめ!」
自分から嫉妬を煽る画策をくわだてておきながら、結局自分が嫉妬で腸が煮えくり返りそうになっている朱朗。
浮気されたばかりの京香ちゃんから引き抜き、浴室に直行する。
スモークがかかったガラス張りの浴室で、朱朗は、湯船にためていたバブルの湯船に飛び込み、湯の中にもぐった。
「(なんのためのBMのミニだよ。阿呆星來)」
本当は青司のススメで将来は日本車を購入しようと決めていたのに、星來がチリレッドのミニに乗ってみたいというからドイツ車を購入した朱朗。
星來の前では平然とした態度を保てていられるのに、実際は普通に落ち込む21歳のクズであった。
「ちょっとアロー!本命に拒否られたからって生ごろし反対!!」
「朱朗くん、センチメンタル期突入しちゃった〜?」
二人のギャルが浴室に入ってきて、朱朗がネッシーのように湯船から顔を出す。
「……繊細すぎてごめん。」
いじけたように、口を尖らせる朱朗。
二人のギャルがキュンと胸を鳴らす。たまらず湯船に飛び込んで、可愛い朱朗を元気づけようと、色々なことをし始めた。
三人の雄たけびのような笑い声が『病んちゃ一族』に響き渡る。
救いようのないクズが、救いようのない悪女を作り出す。まるで生産性のない話である。
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