第51話

人間文化論の出欠が執り行われる。



頼まれていた4人と自分の出席の返事をしたところで、朱朗からメッセージが入ってきた。



《現場17時入り?》



今日は教育テレビの収録がある星來。クズ俳優の朱朗は残念ながら教育テレビには使ってもらえない。



それにも関わらず、星來のスケジュールを知っている朱朗。いや、スケジュール共有アプリで勝手に共有されているのだ。



〈16時〉



それだけ返せば、またすぐに朱朗からメッセージが入ってきた。 



《真面目ちゃんはりが早い。んじゃ15時30分に車で待ってるわ。》


〈今日は青兄が迎えきてくれるからいらない〉


《は?いいの?俺もまたえっちすっけど。》


〈お好きなように👌〉


《ありがとー清純派せーらちゃん😘》



そんなやり取りをしている間にも、“朋政朱朗”の名前はすでに読み終わってしまっていた先生。星來は“してやったり”の顔でスマホを鞄にしまった。




「なんともまあ嬉しそうな顔で。」



一弥がシンプルな筆箱から細いシャーペンを取り出して言った。無表情ではあるが、不服そうにため息をついて。



「そう見える?」


「そういうカマトトぶってる星來も僕は好き」


「愛の告白だったらファンに捧げたら?」


「そういえば捧げたことないや」



星來が空調を気にするように、自分の腕をさする。すると一弥が、自分の着ていた薄いジャケットを脱ぎ星來の肩にかけた。



ファンには塩、星來には神対応の響木一弥だった。

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