第49話
もちろんそんな愛しの星來様と番犬のやり取りは朱朗に丸聞こえなわけで。
朱朗は舌打ちをしてから、星來に再び愛の言葉を並べる。
『KGホールディングスがもうすぐ株式分割するって。』
「見た見た、株主優待が50%オフになるんでしょ?」
『せーら、あっこのヘアオイルいいって言ってたじゃん。買いじゃね?』
「あー……どうしようかな。いつか広告に起用されたら無料提供されるかもしれないし」
『おっと俺様トレーダーが糞かわ彼女のためにポチッちゃいまして。』
「ふふ、彼女に甘いドブネズミ様だこと。」
生涯収入が安定しない芸能人の資産運用は当たり前。二人は積立NISAに始まり、株への投資も積極的に行っていた。もちろん手堅い貯蓄も。
前分けにした星來の黒髪が講義室内のLEDに照らされ艶を目立たせる。白いブラウスにくすみ系ブルーのスカート。
その透明感とオーラはまさに有名脚本家を生み出した由緒正しき風音という名家出身であるが所以。左口元のほくろが一層優艶さを引き立てている。
隣では一弥がペットボトルのキャップを開け、海外製の軟水を飲む。
まだスマホで話している星來にペットボトルを見せると、星來がそれを受け取り、コクリと飲んで。一弥がキャップを閉め自分の机の前に置けば。
当たり前のようになされる関節キスに、周りから癒やしと羨望の眼差しを向けられる。
女優とアイドル。二人の曖昧な関係性がたまらないと、遠目に見惚れる学生は多い。
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