第39話
朱朗が星來を抱きしめようと至近距離に迫る。
しかし朱朗は、伸ばした手をその身体に回さず。透き通るような頬に触れ、
星來の唇に自身の唇を重ねた。暗闇にも映える、濃色のピンクの唇に。
星來の目が見開き。心臓が止まりそうなほど、モーションが途切れ途切れにカットされていく。でもしっかりと自分の胸が深い浮き沈みをしているのを感じた。
「ん、んッ」
初めての感触が、星來を襲う。
朱朗が、舌を入れてきたのだ。
無理に縫われた唇を彼の舌でこじ開けられ、その一瞬の隙をつかれた星來がふわりと籠絡されていく。
怖くてきゅっと目をつむるも、朱朗は容赦なく星來の口内をまさぐった。
「ンんッッ」
朱朗が星來の肩をつかむ手に力が入り、星來が涙目になって。彼女の唇をじゅっと吸い上げ、彼が最後にひと舐めする。
「っ、ひ、ひど……」
星來が演技などお構いなしに泣き言を言えば。
「俺の彼女は俺の好きにしていいんだよ」
と、少しばかりの憤りを混じえた声で囁いた朱朗。
そのまま、ブランコに座る星來をぎゅっとつかまえるように包む。
星來も腕を伸ばし、ハグを受け入れる雰囲気を出さなければならないのに。
星來は初めての深いキスに、動けなくなっていた。
まだ17歳、されど17歳。好きな人とはいえ無理矢理されたキスに、小さな恐怖と胸のあたりのくすぐったい感覚。そしてゆるふわに揺れる鼓動。
何か朱朗をひるませるような言葉を探そうとするも、鼓動に連動して揺れる思考。星來の口からは、朱朗に吹き込まれた生ぬるい息しか出なかった。
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