第37話

正直、17歳の星來は朱朗と同じ意見で、違う男と抱き合っているなんてクズ以外の何ものでもないと思っていた。



だからクズだと朱朗に言われ、優越感に浸る星來。「ふふ。」とブランコを揺らし妖艶に笑う様はきっとクズ女の特徴であるだろうと。星來は演じてみせた。



 

朱朗にとっては、いつものくだらない会話がくだらないものにはならなかった。



ウォーキングレッスンの時に見た青司との距離感は確かに近いものだった。それに響木一弥という男も、星來を貶した時に見せた怒りは、親密という名のそのままを表していた。



ただ、嫉妬が募り狂う。



星來がクズだろうがなんでもいい。ただその初めては自分がよかった。



自分はなぜ星來をクズにするその男の中には入っていないのか。せめてその中に入りたい。星來を駄目にする男でいたい。星來の全ての初めてを奪いたい。



17歳ながらにそう感じた朱朗。



立ちこぎで遠心力に逆らい、振り子を大きく揺らしてから飛び降りた朱朗。朱朗に追いつけないブランコが錆びた金具の音を鳴らし、公園の暗闇にやたら響く。



二人きりだと思わせるような静けさ。



でも朱朗は、仕事でなければ独占欲をぶつけられる勇気がまだなかった。だからその矛先に、いつもの呪文で予告する。



 

「俺たち、勝ち組に乾杯……」


「……私たち勝ち組に、乾杯。」



朱朗のそれは消え入るような声だったが。星來は予告を受け取った。

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