第36話
朱朗のひと声であっという間に話がまとまってしまい、星來のマネージャーは星來に目を配りながらも、当たり前のように話を進めていく。
有名ゴシップ誌『サテライト』のカメラマンもその話し合いに参加していたため、撮影はその日の夜に行われることとなった。
スケジュールは常に変動するため、撮れる日に撮った方がいい。二人にとってはゲリラ撮影となった。
郊外にある、
「いやあまさかこんな枠外であんなにいいギャラが発生するなんてな。」
「……お互いジュニアNISAも積立もやってるし別にヤラセ案件なんてなくてもいいじゃない。」
「なんでも経験経験。芸能人なんて短命なんだから稼げるうちに稼いでおかないと〜。」
昔は事ある毎に七光りのある自分に結婚をせがんできた癖に。いつの間に自分で稼いでいくことを覚えたのか。
朱朗は自分と恋愛関係を疑われてもいいのか。わざと転ばせたいとまで思ったような相手と。星來は今回のヤラセにやりきれなさでいっぱいだった。
マネージャーやスタッフがロケ車から見守る中、カメラマンが二人の姿を狙える位置からレンズを覗く。小さなタリーランプが茂みの中で赤く光っていた。
二人は公園の暗闇の中、適当にブランコに座りとりあえずいつも通りくだらない会話をしていた。
カメラマンには、いつものプライベートな感じで、二人のタイミングでハグをして欲しいと言われている。
「星來って男とハグしたことあんの?」
「あるよ。」
「……え、」
「というか、ぎゅうって抱きしめるやつ。」
「はいはい。お父さんとってやつね。」
「違うよ、青兄と。あと一弥と。だよ。」
「…………」
「朱朗だってあるでしょ?心音ちゃんだかコロネちゃんだかと。」
「…星來って。そんな二股するようなクズな女なの?」
「はあ?たかが抱き合うくらいで何言ってんの。」
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