第33話

“彼氏役”と言われて、内心ドキドキしていた星來。



もし。もしもこのかまってちゃんが自分のことを好きだとしたら……こんなにもセクハラはしてこないだろうし、あの時のファッションショーで私を転ばせはしないだろう。



きっと私を好きなふりをして、私が好きになったら

『は?何勘違いしちゃってんの。せーらってば恥ずかし。』とか言うつもりなのだ。



だって、ほら。今だって。



「うあ〜まじかあ。」



スマホを片手に持つ朱朗が、テーブルに肘をつき顔をしかめる。 



「……どうしたの」


「心音ちゃんから《朱朗くんのカノジョにして欲しいな❥》ってメッセージきてるわ〜」


「……だから誰すぎ。」


「たまにカラオケデートするからってその気になられてもさ。参ったなあ〜」



カラオケデート?カラオケってデートする場所なの?密室だし、カップルなら分かるけど。てかデートっていうからには大人数じゃないわよね?やっぱ二人きりってことよね?



星來は脳内サーチエンジンで“カラオケデート”というワードを走らせた。



「《愛人ならオッケー👌》って返しとこ。」


「………」 



既婚者なの?



結局、相手に気を持たせるのが上手い朱朗は、今はクズ二軍で、いずれクズ一軍の座を勝ち取りにいくのだろう。



悪いけど、私だって今はクズ二軍とも言えなくはない。その輝かしい一軍の地位を今に勝ち取ってみせるわ。



朱朗に受け入れられることなどないと思っている星來は、この際クズになってやるとよく分からないすねらせ方をしていた。





一方の朱朗は。



「(第一夫人はマッパの星來、第二夫人はガーターベルトの星來、第三夫人はナースの星來。てか心音って…誰すぎ?)」



心音ちゃんの名前と顔が一致しない朱朗は、やはりクズのお控え選手だった。この際私服の星來がランクインしていない件についてのツッコミは省く。

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