第28話

トップにくれば、プリンスとプリンセスのようなお辞儀をした二人。



お互いそれぞれのポージングは決まっていたはずなのに、長年連れそった勘とでもいうべきか、二人は共にアドリブを披露した。



朱朗が被っていたキャップを星來に深く被せ、星來が頬に手を当て驚きのポーズをする。朱朗が星來のキャップのつばを少し上に上げて、二人で顔を見合わ笑顔になれば。



内側に半回転し、後ろ姿で腕を組んでランウェイを歩いていく。



帰りはデートのようなシチュエーションを意識したランウェイだった。



そこまでアドリブが息ぴったりなのに。



大きな声援の中、星來は舞台袖に戻ると、すぐにシューズを脱ぎ、そこから走り去るように出ていった。



「星來ちゃん?!」

「星來……?」



途中、亜泉と一弥に声をかけられたが、今はその顔を誰にも見せたくなかった。



何人かのスタッフやキッズとすれ違って、小走りで駆けていく星來に好気の眼差しが向けられた。本人は馬鹿にされた眼差しに思えたが、羨望の眼差し以外の何ものでもない。



早く涙を抑えたいと思いつつ、手の甲で顔をこすればポップカラーのメイクが皮膚についている。メイクが剥がれ落ちて、14歳ながらに最悪だと思いトイレに駆け込もうとした。




「星來ちゃん!」



ランウェイを観て、星來の様子がおかしいことに気付いていた青司。星來の腕をつかまえ、長い指でがっしりつかみ引き留める。

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