第25話
「(リハではこんなに滑らなかったのに……おかしい。)」
ヒールではない、フラットなシューズだから安心していたはずなのに、足が思ったように前に進まない。
今日は青司も観にきているはずで、青司に教えられた途中でのターンを上手くできるかどうか不安になる星來。
ランウェイの3分の2ほど来た頃だった。この際ターンを省こうかと思い、先端にあるカメラに視線を集中させた。
そのカメラに点灯する赤いタリーランプが星來の瞳をかすめた。
―――――瞬間
星來は自分が撮られていることに緊張を覚え、足を滑らせてしまう。
「(ッ――――)」
まずいと思う間もなく転び、尾てい骨を床に打ちつけた。
「(いった、)」
かかとが滑って後ろに転び、尻もちをついた状態の星來。
周りが「あっ!」と声を上げざわめく中、周りのカメラに宿るタリーランプに星來の身体は硬直していく。
舞台よりもずっと観客やカメラとの距離が近い。手を伸ばせば届いてしまいそうなくらい。
今まで星來は、曽祖父の名を汚さぬようにと必死に女優業を歩んできた。
彼の七光りのお陰でここまできたにしろ、自分の実力でここまでのし上がったにしろ、どちらにせよ女優とはプライドを掲げて生きていかなければならない。
失敗など羞恥の極みだった。
朱朗がリハで注意されて拗ねた時、もっと親身になってあげれば良かったと星來の脳裏に浮かぶ。
涙が出そうだった。
でも。
観客から新たな声援が湧き上がる。
「あろうくんっ!」
「キャーせーらちゃんとリンクコーデ?!」
「かわいい!カップルみたい!」
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