第24話
「あった!衣装の段ボールに入ってた!」
そう声を上げ、赤いバレエシューズを掲げて見せたのは朱朗だった。
「ありがとう朱朗!」
星來が駆け寄り、朱朗から靴を受け取る。
「3分前!!」
スタッフの声が放たれ、朱朗と星來が位置につく。
慌てて靴を履きかえる星來。朱朗が星來に右手を出し、星來も朱朗に向かって右手を出す。
「俺たち勝ち組に乾杯」
「私たち勝ち組に乾杯」
芸能人であることをどこかで否定しつつも、お金と血縁の力でのし上がったことに対する皮肉めいた気合いの音頭であった。
握手して、そこから親指を合わせ、グーとグーを合わせて。手で波をつくながらお互い離していく。
チャラいサーファーのような挨拶を昔見た動画で覚えた二人。二人で仕事の時は、必ずこの儀式をやる決まりになっていた。
まず先行は星來。
長いランウェイの舞台へと足を踏み出す。
舞台を何度か経験している星來だが、観客に前からしか観られない舞台とは違い、ランウェイは横も後ろも観られる。
ランウェイに沿って列を成す観客。舞台袖を除く340度にわたって何百人もの視線が一身に注がれる。
そして、ステージ上に取り付けられた大画面のスクリーン。
星來は身を引き締め思った。自分は舞台に慣れている。どこから観られようと関係ないと。
しかし――――
鏡ほどではないが、床は白っぽいグレーのような色で、影がはっきり映るようになっているツヤのある床は、滑り止めが塗装されているはずなのに。
星來はシューズが滑って滑って、自然を装うのに必死だった。
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